鹿児島 – safar http://safar-magazine.com これからの旅とストーリー Tue, 14 May 2019 02:54:38 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.2.20 トカラ列島のレントゲン便⑤ トカラ列島の旅情報 http://safar-magazine.com/tokara_islands_5_info/ http://safar-magazine.com/tokara_islands_5_info/#respond Wed, 24 Oct 2018 03:13:27 +0000 http://safar-magazine.com/?p=311 鹿児島県十島村、トカラ列島
Tokara Islands, Toshima Village, Kagoshima, Japan
十島村営の定期船「フェリーとしま2」の施設、トカラ列島に関するWebサイトや書籍の一部を紹介します。トカラ列島の情報はとても少なくて、旅行ガイドブックでもほとんど見かけませんが、数少ないその情報にはトカラへの愛情があふれていました。トカラ列島に行く予定がある方、行ってみたい方は参考にしてみてください。
(文:根本聡子)
定期船「フェリーとしま2」
客室は一等、指定寝台、二等の3種類。今回の旅で予約したのは指定寝台で、2段ベッドが2つ横並びになった客室を3人で利用した。ベッドのサイズや寝心地は不足がなく、荷物が置ける共用スペースも十分。二等はいわゆる雑魚寝だが、一人ずつスペースが仕切られているので、乗客が少なければかえってくつろげるかもしれない。
レストランにはカレーライスや焼きそばなどの簡単なメニューがある。食べ物を持ち込んだり、寝転んでテレビを見たり、宴会したり、ダイニング兼リビングルームとして利用されていた。自販機はソフトドリンク、菓子パン、カップラーメン、スナック菓子、ビール、アイスクリームなどひととおり。食べ物を持参しなくても困ることはない。
その他、船内にはシャワー室、キッズルーム、授乳室、診療所などが揃っている。通路のソファやデッキの椅子など、客室やレストランのほかにも居場所があるのがよかった。Wi-Fiは無料で利用できるが、「動画など大容量のデータ通信を行うと、本船全体のWi-Fiが止まることがある」との注意書きあり。実際、あまり安定していなかったので、必要最低限の利用にとどめるのがよさそうだ。
共用スペースの内装は明るい色合い。壁に魚や花の絵が描かれている。
2階の通路にはソファが置かれ、のんびりできるスペースになっている。
キッズルームの壁にはかわいらしいボゼやトカラ馬が描かれていた。
客室と乗客が利用する諸施設は1階と2階にある。乗客の乗り降りは1階から。
指定寝台の2段ベッド。枕元に小さな網棚とコンセントが備わっている。
レストランは手前がテーブル席で奥が畳敷き。窓が広くて海の見晴らしもよい。
レストランの照明はトカラの名物がモチーフ。ハイビスカスやボゼもあった。
自販機は数台あり、品揃えが充実している。ビールはアサヒスーパードライ。
トカラ列島の情報入手先
十島村役場公式サイト
地図、みどころ、宿泊施設、釣りポイント、お祭りなど、有人各島の基本的な観光情報がまとめられている。十島村の気象情報も便利。トカラ列島には飲食店がなく、売店があるのは一部の島のみ。民宿は1泊3食付きで各島に数軒ある。島内にレンタカー、レンタバイク、レンタサイクルは原則的にない(と考えたほうがよい)。ただし、フェリーとしま2を運航する中川運輸にレンタサイクルが2台あり、前日までに予約すれば鹿児島港で借りることができる(2018年5月14日現在)。
十島村役場公式サイト>フェリー情報
フェリーとしま2の運航スケジュール、料金、運航状況はここでチェックしよう。鹿児島港にはフェリー乗り場が複数あるので注意。フェリーとしま2は鹿児島本港南埠頭を出港する。また、鹿児島本港から徒歩5分ほどの場所に、十島村役場、トカラ列島の物産品が買える「トカラ結(ゆい)プラザ」がある。
かごしま遊楽館 観光案内コーナー
東京・有楽町の観光案内コーナーには、トカラ列島のパンフレットも置いてある。紙の地図がほしい場合はこちらへ。島内での交通などを尋ねると、その場で鹿児島の十島村役場に問い合わせてくれた。
 
トカラ列島の参考文献
『吐噶喇列島 〜絶海の島々の豊かな暮らし〜』 斎藤潤
島旅の本を何冊も出しているフリーライターの斎藤潤さんが、いちばん好きだというトカラ列島を詳しく紹介した一冊。車がなかった時代の運搬の苦労、移住してきた若い世代の奮闘、ボゼの仮面が作られる様子、近年まで行われていた風葬の習俗など、同じ日本とは思えないエピソードの数々が綴られている。口之島の野生牛を地元で「ところうし」と呼ぶくだりには、じんわりとあたたかい気持ちになった。(光文社新書、2008年8月15日発行)
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『吐噶喇 〜トカラの遠い空から』 瀬尾央(ひろし)
著者は自ら操縦桿を握る航空撮影のプロフェッショナルで、航空に関わる社会教育や調査研究も手がけている。十島村の上空写真を撮影したことがきっかけでトカラと縁ができ、トカラを広く知ってもらいたいと本書を著した。1992年に発行された本だが、空撮写真が満載で眺めて楽しく、島の祭事や人々の暮らしぶりがリアルに伝わってくる。空撮だけでは飽き足らず、著者はトカラの美しい海を撮るためにダイビングにも挑戦。空から海からトカラ列島を俯瞰で眺めるスケールの大きさは飛行機乗りだからか。絶版になっているので中古品または図書館でぜひ(世田谷区立図書館にはありました)。(山と渓谷社、1992年6月1日発行)
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『トカラ列島 秘境さんぽ』 松島むう
島旅が好きなイラストエッセイストによるトカラ紀行で、トカラ列島から帰ってきてから読んだ。レントゲン便の旅では島のおいしいものを一度も口にできず、乾きものや缶詰やインスタント食品ばかり食べていたので、島の魚や料理のイラストに見入ってしまった。巻末に旅の便利帳が付いていて、ガイドブックとしても役立つ。(西日本出版社、2018年7月26日発行)
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『生きていく民俗 〜生業の推移〜』 宮本常一
第1章「くらしのたて方」に宝島の自給社会が書かれている。民俗学者である著者が宝島へ渡ったのは1941(昭和16)年。かつては年に一度の年貢船を出す以外に島外との交通はなく、貨幣が流通することはほとんどなく、職業の貴賤や階級の上下もなかった(でも琉球から来た人への差別はあった)などの記述がある。本書ではほんの5〜6ページしか割かれていないが、強烈な印象に残り、トカラ列島に興味を持つきっかけになった。(河出文庫、2012年7月20日発行)
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(おわります)
 
文・船内写真:根本聡子
旅行した日:2018年5月14日〜17日

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トカラ列島のレントゲン便④ 小宝島・宝島 http://safar-magazine.com/tokara_islands_4_akarajima/ http://safar-magazine.com/tokara_islands_4_akarajima/#respond Mon, 22 Oct 2018 02:42:44 +0000 http://safar-magazine.com/?p=262 鹿児島県十島村、トカラ列島
Tokara Islands, Toshima Village, Kagoshima, Japan

旅の3日目は小宝島と宝島へ。火山活動によって造られたこれまでの険しい島々と違って、サンゴ礁が隆起してできたこの2つの島は平地が多く、南国らしいおだやかなたたずまいです。岩山も海岸も琉球石灰岩に特有の明るい色合い。悪石島と小宝島の間には動物の分布境界を示す渡瀬線が引かれ、トカラ列島の有人島のうち小宝島と宝島だけにハブが生息しています。夕方、奄美大島の名瀬港でトカラ列島の旅は終わりました。
(写真:武藤奈緒美、文:根本聡子)

On the third day we visited Kodakarajima and Takarajima which mean treasure islands. These two islands had been created by coral reefs rising out of the Ocean and they have the flat grounds and the rocks of limestone. That topography makes a calm and bright atmosphere, being much defferent from other islands of Tokara created by volcanic activities. There is the border of animal distribution “Watase-line” between Akusekijima and Kodakarajima, and poisonous snake “Habu” inhabit in Kodakarajima and Takarajima. We finished our trip at Naze in Amamiooshima.
<photographs by Naomi Muto, text by Satoko Nemoto>

 

小宝島

中之島より南の島々は港が小さかったが、小宝島の港はさらにこぢんまりしていた。鹿児島本土からトカラ列島への定期船が就航したのが1933(昭和8)年。当時は定期船が接岸できる島はなく、沖合に停泊した船に艀(はしけ)で渡り、荒波にのまれる危険を冒して人や荷物を乗り降りさせていた。なかでも小宝島は1990(平成2)年に定期船が接岸できるようになるまで、日本の有人島で最後まで艀作業を行っていたという。

小宝島の入港は8:20。桟橋に降り立つ乗客に、「ロープに近づかないで!」「車が通るからよけて!」と注意を促す怒声が飛ぶ。ピンと張られた係留のロープがはずれると大ケガをすると言われて、下船すると早々に港を離れた。振り返ると、船から降ろしたコンテナも防波堤の上にのせているほど桟橋は狭い。

タラップを降りるとすぐ防波堤に突き当たるほど小宝島港は小さい。

小宝島は洋上から見ると妊婦が横たわっている姿だそうで、“子宝に恵まれる”という言い伝えもある。

 

小宝島は周囲4kmの小島で、30分ほどで一周できるらしい。でも、出港までは1時間20分しかない。しかも、船に戻る時間は出港15分前だったのが、遅れて来る人がけっこういたからか、そのうち出港20分前になり、小宝島では出港25分前に決められていた。無理して一周するのはやめて、集落までゆっくり歩くことにした。

平家の隠れ家といわれる大岩屋を右に折れると、海側の一帯に広々とした草地が広がる。これまで見てきた険しい地形の島々から一転、隆起サンゴ礁でできた小宝島は平坦な道が続いていた。長い年月をかけて侵食された奇岩があちこちにそそり立ち、なかには神の名が付けられた神聖な岩もある。港に近いこの草地は南風原(はえばる)牧場で、たくさんの牛が放牧されていた。ここから出荷される仔牛が全国各地でブランド牛になる。

巨大なマッシュルームのような奇岩が草地にぼつんとたたずむ。

姿のよい牛たち。左端に見える奇岩はうね神と呼ばれている。

南風原牧場の厩舎を見せてもらうと、仔牛にじっと見つめられた。

これから出荷する仔牛。生産者によると生まれて8カ月だそう。

左にうね神、中央に赤立神が見える。どちらも小宝島のシンボル的な奇岩。

 

南風原牧場を過ぎて集落への道を進む。集落の入口に小宝神社があり、道沿いにハイビスカスの花が咲いていた。住民健診の最中なので人の気配はなく、緑に囲まれた静かな通りをのんびり散策する。

すれ違った村役場の職員から、藪の中に入らないように注意された。トカラ列島は温帯と亜熱帯、大和文化と琉球文化の境目にある地域だが、動物の分布境界線も悪石島と小宝島の間にあり、小宝島と宝島だけにハブが生息している。奄美諸島のハブほど毒性は強くないそうだが、道の端を歩かないように気をつけた。

海中のサンゴ礁が隆起して、長い時間をかけて風化。琉球石灰岩は独特の景観を造り出す。

小宝島は亜熱帯気候。ハイビスカス、アダン、ソテツなどが自生する。

さまざまな種類と色のハイビスカスの花が風に揺れていた。

鳥居の真ん中に小宝神社の文字が見える。手入れが行き届いた境内。

集落の軒先で育てられている花々も目を楽しませてくれる。

島の中央に盛り上がった竹の山はわずか102.7mの高さ。小宝島は水不足に悩まされてきたといい、空撮写真を見ると頂上付近に貯水池が残っている。

 

奇岩の赤立神が立つ海水浴場までは行けず、近くの海岸をぶらぶら歩きながら港へ戻る。9:40に小宝島を離岸。「本船は宝島へ向けて出港いたしました」と心躍るアナウンスが流れた。

島の周辺は隆起サンゴ礁の浅瀬だが、沖へ出ると600mぐらいの深さまで落ち込む。船上から眺めると海の色が急に濃くなるのがわかる。

小宝島を出港。エンジンで海水がかき回され、クリームソーダの色に変わった。

 

小宝島メモ
面積:0.98 km2 周囲:4.74 km 最高点:102.7m 人口:53人
みどころ:うね神、赤立神、牛牧場、大岩屋(平家のかくれ家)、外ばんや・ばんや、艀(はしけ)、湯泊温泉
注意点:トカラハブ

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トカラ列島のレントゲン便③ 諏訪之瀬島・平島・悪石島 http://safar-magazine.com/tokara_islands_3_akusekijima/ http://safar-magazine.com/tokara_islands_3_akusekijima/#respond Thu, 18 Oct 2018 02:30:09 +0000 http://safar-magazine.com/?p=209 鹿児島県十島村、トカラ列島
Tokara Islands, Toshima Village, Kagoshima, Japan

「フェリーとしま2」は口之島と中之島を巡った後、さらに南下して諏訪之瀬島、平島、悪石島に寄港しました。鹿児島に近い口之島と中之島に比べ、諏訪之瀬島より南西の島は港も小さく、次第に離島感が増していきます。2日目の夜は悪石島のやすら浜港に停泊。島の民宿は部屋数が限られているため、乗客の多くは船中泊となります。
(写真:武藤奈緒美、文:根本聡子)

After Kuchinoshima and Nakanoshima, “Ferry Toshima 2” arrived at Suwanosejima, Tairajima and Akusekijima.  The ports of the islands in the southeast of Suwanosejima are much smaller than those of two islands close to Kagoshima,  and I felt an isolated atmosphere about the farther islands. On the second day we stayed overnight on the ship at the port of Akusekijima.
<photographs by Naomi Muto, text by Satoko Nemoto>

 

諏訪之瀬島

中之島を出港した「フェリーとしま2」が次に向かったのは、30km先にある諏訪之瀬島。トカラ列島では中之島に次いで大きな島だが、地図を眺めると道路が通っているのは島の南部だけ、しかもごく狭い範囲で、島の中央は「御岳(おたけ)火口付近は火山活動のため立入禁止」となっている。

標高799mの御岳は過去に大噴火を繰り返してきた活火山で、いまも噴煙を上げ続けている。1813(文政10)年の爆発的な噴火ではほとんどの人家が消滅し、全島避難によって諏訪之瀬島は無人島になった。およそ70年後の明治初期に来島した奄美大島出身の藤井富伝らが、困難と苦労を重ねながら再び入植した歴史がある。現在もなお赤黒い溶岩流や火山堆積物が噴火当時の姿を残していて、島全体が緑に覆われたこれまでの島々とは違う様相を呈している。

船が近づくと、諏訪之瀬島の荒々しい岩肌が迫ってくる。

接岸する前、海岸付近に乙姫の洞窟が見えた。

 

諏訪之瀬島の入港は11:05。雲ひとつない青空の下、強い日差しが降り注いでいた。諏訪之瀬島には東岸と西岸に2つの港があり、天候によって使い分けている。この日は東岸の切石港に入港した。これまでの2島に比べて、諏訪之瀬島の港はとても小さい。桟橋が狭くて居場所がないので、下船するとすぐに港を離れた。

南下するにつれて海の色が明るくなってきた。

島の南東にある切石港に入港。乗客が下船すると小さな港が人でいっぱいになる。

切石港は桟橋の幅が狭く、ぼんやり立っていると港の作業の邪魔になって危険。

 

切石港から北へ、防波堤の上を歩いて、船から見えた乙姫の洞窟へ行ってみた。竜宮城の乙姫が海から上がって物思いにふけった洞窟といわれている。洞窟の中はひんやりして、暑さをしのぐのにちょうどいい。天井からぽたりぽたりと水滴が垂れてくる。上を向いて口で受け止めようとするが、なかなかうまく落ちてくれない。洞窟の中からは切石港と海が望め、明暗のコントラストが美しかった。

2つの港がある島の南部は低木で覆われ、ところどころにゴツゴツした岩が露出している。

乙姫の洞窟の入口。道らしい道はなく、人の踏み跡をたどっていく。

洞窟の中は涼しい。岩壁のすきまにシダ類が根を張っている。

ヤギの落とし物が転がる洞窟の周辺に、清涼な香りを放つ草がまるで臭い消しのように群生していた。

 

諏訪之瀬島の停泊時間は1時間40分と短いため、あまり遠くへは行けない。乙姫の洞窟からいったん切石港へ戻り、その先のナハ浜を目指すことにした。上り坂の舗装道路をしばらく行くと、ナハ浜へ分岐する道標が立っている。リュウキュウチクがアーチを作る未舗装の道を進み、正面に海が開けたところで時間切れ。もと来た道を港へ引き返した。

ナハ浜へ続く道。舗装道路と違って木陰が涼しい。口之島から悪石島まではハブがいないので、こんな藪の道を歩いても大丈夫。

高台から潮の引いた海を眺める。降りてみたいけれど道がない。

停泊する船の背後は切り立った断崖。山の上のほうは溶岩そのもの。

 

ナハ浜から東のほうへ行くと、諏訪之瀬島のみどころになっている空港跡地(諏訪之瀬島空港)がある。1970年代の後半、ヤマハのリゾート開発によって造られた空港で、1980年代にリゾート計画が頓挫して放置された。現在は緊急用のヘリポートとして利用されている。日本最後の秘境ともいわれているトカラ列島で、そんな空港跡地が観光スポットになっているのが面白い。切石港から往復4.5kmと聞き、空港跡地へ行くのはやめて海を眺めるほうを選んだ。

火山からの噴出物なのか、諏訪之瀬島は浜の砂も黒い。

 

諏訪之瀬島メモ
面積:27.61 km2 周囲:27.15 km 最高点:799m 人口79人
みどころ:乙姫の洞窟、藤井富伝翁の墓、作地温泉、ナハ浜(塩見崎)、空港跡地、マルバサツキ

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トカラ列島のレントゲン便② 口之島・中之島 http://safar-magazine.com/tokara_islands_2_nakanoshima/ http://safar-magazine.com/tokara_islands_2_nakanoshima/#respond Fri, 12 Oct 2018 03:48:52 +0000 http://safar-magazine.com/?p=134 鹿児島県十島村、トカラ列島
Tokara Islands, Toshima Village, Kagoshima, Japan

旅の1日目は飛行機で東京・羽田から鹿児島へ。鹿児島本港からトカラ列島行きの「フェリーとしま2」に乗船しました。船は23:00に出港し、翌朝5:00から夕方にかけて、口之島、中之島、諏訪之瀬島、平島、悪石島の計5島を巡りました。船酔い覚悟でのぞんだトカラ列島行きですが、天気がよすぎて海はベタ凪ぎ。船はほとんど揺れることなく、定刻通りに各島へ入港しました。トカラ列島で初めて降りた島は、鹿児島港の南西200kmにある口之島です。
(写真:武藤奈緒美、文:根本聡子)

On the first day of the trip, I flew from Tokyo / Haneda to Kagoshima and got on “Ferry Toshima 2” from Kagoshima Main Port to Tokara Islands with my friends. Leaving at 23:00, we visited Kuchinoshima, Nakanoshima, Suwanosejima, Tairajima and Akusekijima on the second day. The weather was pretty good all day and the ship entered each island on time as scheduled, almost without shaking. The island we first went down was Kuchinoshima that is located 200km southwest from Kagoshima.
<photographs by Naomi Muto, text by Satoko Nemoto>

鹿児島本港から「フェリーとしま2」に乗船

5月14日(月)。朝9時に十島村のホームページでフェリーの出航を確認。予定通りの出航にほっとする。奄美諸島は数日前に梅雨入りしているが、鹿児島と種子島は晴れマーク。天気は悪くなさそうだ。日中の鹿児島は日差しが強く、気温26度とけっこう暑い。鹿児島本港で乗船券を購入し、十島村役場で下船時に行けるみどころを教えてもらい、スーパーとコンビニで2日分の食糧を調達。鹿児島中央駅近くの屋台村で食事をすませ、温泉に寄ってから鹿児島本港へ戻った。

十島村営の「フェリーとしま2」は4月に竣工したばかりの新造船。総トン数は1,953トンで、先代「フェリーとしま」の1,389トンより4割ほど大きい。旅客定員も200名から297名に増えた。そばで見上げると思いのほか大きくて迫力がある。

真新しく快適なフェリーとしま2。客室は2等客室(雑魚寝)、指定寝台(2段ベッド)、1等客室の3タイプ。レストラン、シャワー室、キッズルームなどもある。

 

乗船は21:00から始まる。時間になると、フェリーターミナルの待合室に三々五々、乗客が集まってきた。住民健診に携わる医療関係者をはじめ、発電所や消防車やNTTの中継施設の点検作業を行う技術者など、仕事で乗船する方々に混じって、一般の旅行者も空いたスペースに乗せてもらう。

旅行者といえば、個人旅行者のほかに、トカラ列島7島巡りのバスツアーが乗っていた。急遽、フェリーの運行会社(が運営する旅行会社)が企画したらしい。さらに、鹿児島テレビのクルーと出演者のボーカルデュオ、NHKの番組スタッフ、鹿児島県の職員の視察グループ(推定)など、さまざまな目的の人たちがこのレントゲン便を利用していたことを乗船してから知った。

仕事の人も遊びの人も楽しそうな出港前のフェリーターミナル。

各島への物資が積み込まれる。郵便の真っ赤なコンテナはどの島の港でも目立っていた。

色とりどりの花も積み込まれていった。

 

フェリーとしま2は定刻の23:00に出港。鹿児島の街明かりが次第に遠のいていく。船は闇の中、桜島の大きな島影を通り過ぎ、小1時間かかって錦江湾を抜けると東シナ海へ出た。

離岸の作業をデッキから眺める。夜風が気持ちいい。

港で手を振ってくれる人に手を振り返した。トカラ列島への船旅が始まる。

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トカラ列島のレントゲン便① プロローグ http://safar-magazine.com/tokara_islands_1_prologue/ http://safar-magazine.com/tokara_islands_1_prologue/#respond Wed, 10 Oct 2018 04:43:27 +0000 http://safar-magazine.com/?p=74 鹿児島県十島村、トカラ列島
Tokara Islands, Toshima Village, Kagoshima, Japan

今年のゴールデンウィーク明けにトカラ列島へ行ってきました。県内の人でさえ「どこにあるの?」と口を揃えるその島々は、鹿児島県の屋久島と奄美大島の間、南北約160kmにわたって点々と連なる絶海の孤島です。鹿児島とトカラ列島を結ぶ定期船は週2便のみ。7つの有人島を一度に巡ろうとすると、けっこうな長期旅行になってしまいます。でも、年1回の住民健診便(通称レントゲン便)に乗船すれば、2日間で7島すべてに上陸することが可能。実際、ほぼ“上陸しただけ”でしたが、幸いにも天候に恵まれ、それぞれに地形や植生が異なる美しい島々を駆け足でまわってきました。
(写真:武藤奈緒美、文:根本聡子)

In the mid of May I visited Tokara Islands in Kagoshima Prefecture. The islands are scattered over a length 160km, between Yakushima and Amamiooshima in East China Sea. Since scheduled ferry service connecting Kagoshima and Tokara Islands is operated only twice a week, it usually takes a lot of days to travel all the islands. However, once a year, there is a special ferry service of medical checkup for residents, which stops at seven inhabited islands in almost two days. Fortunately it was blessed with weather and I enjoyed beautiful islands with different geographies and vegetation.
<photographs by Naomi Muto, text by Satoko Nemoto>

島と島の間は20〜30kmのところが多い。訪れた島が遠ざかり、そのうち次の島影が見えてくる。

トカラ列島の島々はリュウキュウチクやビロウなど、本土とは違う植生に覆われている。

年1回のレントゲン便で7島めぐり

東シナ海の屋久島と奄美大島の間にトカラ列島はある。漢字で書くと吐噶喇列島。全部で12の島からなり、そのうち7つが有人島、5つが無人島だ。有人島は北から、口之島、中之島、諏訪之瀬島、平島(たいらじま)、悪石島(あくせきじま)、小宝島、宝島。行政区分は鹿児島県十島(としま)村で、村役場は島ではなく鹿児島市の鹿児島港近くにある。いちばん鹿児島寄りの口之島から、もっとも奄美大島に近い横当島(よこあてじま)まで、十島村は南北約160kmにおよぶ“日本一長い村”でもある。

 

トカラ列島へは空路がなく、鹿児島港〜有人7島〜名瀬(奄美大島)を結ぶ村営の「フェリーとしま2」が週2便運航する。フェリーは各島に10分ずつしか停泊しないため、いっぺんに7島すべてをまわるのは簡単ではない。いったん島に降りると、次の船が来るまで3〜4日は待たなければならず、東京発着だと最短でも27泊28日の大旅行になる計算。台風などの悪天候によるフェリーの欠航も珍しくないから、実際はもっと日数がかかるだろう。

2018年4月に竣工した「フェリーとしま2」は18年ぶりの新造船。快適に過ごせる設備が整っている。

 

でも、年に一度だけ、7島すべてを2日弱で回れるチャンスがある。それが毎年5月に運航される住民健診便(通称レントゲン便)だ。1日目の深夜に鹿児島港を出港して、2日目の早朝にトカラ列島最北の口之島へ入港。港で住民の方々が健康診査を受ける間、正味1時間〜1時間半ほどだが、船長の許可が出れば一般の乗客も島に降りることができる。そうやって有人7島を巡り、3日目の夕方に奄美大島の名瀬港に入港する。

島に着くと胃検診車と胸部検診車が船から降ろされ、役目を終えると再び船に積み込まれて次の島へ。

黒潮に洗われる絶海の島々

鹿児島の南から台湾までの広い海域には、火山活動やサンゴ礁の隆起によってできた島々が、飛び石のように連なっている。屋久島を擁する大隅諸島、トカラ列島、奄美群島、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島など、いくつかのグループを総称して南西諸島という。また、微妙に範囲が違うようだが、「琉球弧(りゅうきゅうこ)」という美しい名前でも呼ばれている。気候も景観も文化も本土とは異なる南西諸島は、離島好きには憧れの地だ。

トカラ列島の有人最南端、宝島はサンゴ礁に囲まれた亜熱帯の島。引き潮の潮だまりは恰好の遊び場。

 

台風の通り道にある南西諸島は自然環境が厳しい。なかでもトカラ列島は黒潮が通過する海の難所で、長い間、開発から取り残されてきた。黒潮は幅が100kmにも達し、毎秒5000万トンもの膨大な量の水を輸送する強い海流。東シナ海を北上してから、トカラ海峡を横切って太平洋に入り、日本の南岸を通って房総半島沖を東に流れていく。船で外洋へ出て黒潮にぶつかると激しく揺れるが、トカラ列島はこの黒潮に常に洗われているため、かつては船の航行も接岸も容易ではなかったという。

気象庁ホームページ「海流の診断の見方」黒潮の診断に記載する代表的な地点より

 

トカラ海峡は黒潮の通り道。海が荒れると厳しい船旅になる。

 

一方で、黒潮が流れるトカラ海峡は冬でも水温が高く、サンゴ礁が発達した豊かな海に多種多様な魚が生息。大物釣りやダイビングのメッカにもなっている。さらに、温帯と亜熱帯の分岐点に位置するため、動植物の種類が豊富で、島ごとに異なる環境で進化した固有種も多い。活火山、温泉、平家伝説、トカラ神道、トカラ馬、トカラヤギ、ボゼ祭り、野生牛。人の手がおよばない自然と独自の文化が残されたトカラ列島は、旅行者を惹きつける魅力的なキーワードにあふれている。

トカラ馬は日本の在来種で、鹿児島県指定の天然記念物。中之島の牧場などで飼育されている。

悪石島と小宝島の間には渡瀬線と呼ばれる生物の分布境界がある。小宝島に近くなると海の色も変わる。

亜熱帯の島々におなじみのアダン(タコノキ)。

 

十島村役場のホームページに掲載されていたレントゲン便の時刻表。5月14日(月)の23:00に鹿児島港を出港する。

 

(つづきます)

 

写真:武藤奈緒美
文:根本聡子
旅行した日:2018年5月14日〜17日

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