口之島
指定寝台の2段ベッドでぐっすり眠り、入港を知らせる汽笛で目が覚めた。朝の4時40分。デッキに出るとあたりはまだ真っ暗で、船が口之島の港に近づいていく。いよいよトカラ列島に上陸だ。
係留するためのロープが船から投げ下ろされ、積荷のコンテナが降ろされ、船尾から桟橋に渡されたスロープを検診車が降りていく。島の人たちはすでに港で待機していて、さっそく健診の準備や荷受けが始まった。交通が不便なトカラ列島はかつて自給自足だったそうだが、いまはほとんどの生活物資を船が運んでいる。
口之島は火山島で、標高425mの燃岳(もえだけ)がいまも水蒸気を上げている。口之島集落には生活用水としても利用される湧き水(カワ)があり、島の南海岸には露天風呂の瀬良馬(せらんま)温泉があり、温泉近くの原生林には純血種の黒毛和牛が野生牛として生息しているらしい。
でも、地図上では小さな島に見えても、口之島の周囲は20kmもあるうえに、山がちな地形はアップダウンが激しい。港から近そうに見える口之島集落も、気軽に歩いて行ける距離ではなさそうだ。そこで、近くの平瀬海水浴場まで海沿いの道を歩いてみた。
30分ほど歩き、平瀬海水浴場に着いたところでタイムアップ。この先には「北緯30度線モニュメント」があるが、後ろ髪を引かれつつ西之浜漁港へ引き返す。第2次世界大戦後、日本は北緯30度以南がアメリカの統治下となり、トカラ列島も1952(昭和27)年に本土復帰するまでアメリカに占領されていた。日本で唯一地上に存在する北緯30度線がここ口之島にある。
西之浜漁港の近くまで戻ってきたら汽笛が鳴り響いた。あと15分で出航。島に降りた旅行者が次々と急ぎ足で船に乗り込む。フェリーとしま2は定刻の7:00ちょうどに離岸した。
口之島メモ
面積:13.33 km2 周囲:20.38 km 最高点:628.2m 人口:129人
みどころ:口之島集落のカワ(湧き水)、平瀬海水浴場、フリイ岳、瀬良馬(せらんま)温泉、北緯30度線モニュメント、タモトユリ、アダン(北限)、野生牛