平島
諏訪之瀬島を出港すると、船は西へと舵を切る。南北に長いトカラ列島は東西2つの島列から成っていて、平島(たいらじま)は古い時代の火山岩でできた西側の島列に属する。平島はその名前から平らな地形を思い浮かべていたが、険しい断崖がそそり立つ海岸は決して平坦ではない。名前の由来は平家伝説にあるらしい。
トカラの各島には平家の伝承が語り継がれ、島司や郡司の家柄も残っている。壇ノ浦の戦いに敗れた平家の一門は、西走して九州各地に逃げ延びた。トカラ列島で最初に流れ着いたのが平島と伝えられ、島内には平家の穴と呼ばれる洞窟や、源氏の追手を監視した望楼の跡などがある。また、平島はトカラ列島のなかでもっとも昔からの風俗が守られている島。祭りはすべて旧暦で催され、中世から続く元服の儀式も行われているそうだ。
平島の南(はえ)之浜港には13:35に入港した。
平島集落にはガジュマルの大木や温泉があるようだが、集落は山の向こうなのでとても歩いては行けない。南之浜港の背後の坂道を上ると牛の牧場があり、トカラヤギが見られるかもしれないと聞いて、つづら折りの舗装道路を歩き始めた。標高が上がるにつれて見晴らしはよくなるが、周囲はリュウキュウチクの低木が広がるばかり。家畜の臭いがするのであたりを見渡すと、木々の間に赤茶色の牛が葉っぱを食む姿が見える。残念ながらトカラヤギは見つけられなかった。
舗装道路は遮るものがなく、強い日差しが照り返してきてさらに暑い。海を眺めながらもと来た道を下りた。南之浜海岸をのんびり歩き(遠景にトカラヤギの親子を発見!)、桟橋の突端から出瀬と呼ばれる磯を眺めて出港を待つ。
平島メモ
面積:2.08 km2 周囲:7.23 km 最高点:242.9m 人口64人
みどころ:甌穴(おうけつ)、平家の穴、大浦展望台、南之浜海岸、あかひげ温泉、ガジュマルの古木