鹿児島県十島村、トカラ列島
Tokara Islands, Toshima Village, Kagoshima, Japan
十島村営の定期船「フェリーとしま2」の施設、トカラ列島に関するWebサイトや書籍の一部を紹介します。トカラ列島の情報はとても少なくて、旅行ガイドブックでもほとんど見かけませんが、数少ないその情報にはトカラへの愛情があふれていました。トカラ列島に行く予定がある方、行ってみたい方は参考にしてみてください。
(文:根本聡子)
定期船「フェリーとしま2」
客室は一等、指定寝台、二等の3種類。今回の旅で予約したのは指定寝台で、2段ベッドが2つ横並びになった客室を3人で利用した。ベッドのサイズや寝心地は不足がなく、荷物が置ける共用スペースも十分。二等はいわゆる雑魚寝だが、一人ずつスペースが仕切られているので、乗客が少なければかえってくつろげるかもしれない。
レストランにはカレーライスや焼きそばなどの簡単なメニューがある。食べ物を持ち込んだり、寝転んでテレビを見たり、宴会したり、ダイニング兼リビングルームとして利用されていた。自販機はソフトドリンク、菓子パン、カップラーメン、スナック菓子、ビール、アイスクリームなどひととおり。食べ物を持参しなくても困ることはない。
その他、船内にはシャワー室、キッズルーム、授乳室、診療所などが揃っている。通路のソファやデッキの椅子など、客室やレストランのほかにも居場所があるのがよかった。Wi-Fiは無料で利用できるが、「動画など大容量のデータ通信を行うと、本船全体のWi-Fiが止まることがある」との注意書きあり。実際、あまり安定していなかったので、必要最低限の利用にとどめるのがよさそうだ。
共用スペースの内装は明るい色合い。壁に魚や花の絵が描かれている。
2階の通路にはソファが置かれ、のんびりできるスペースになっている。
キッズルームの壁にはかわいらしいボゼやトカラ馬が描かれていた。
客室と乗客が利用する諸施設は1階と2階にある。乗客の乗り降りは1階から。
指定寝台の2段ベッド。枕元に小さな網棚とコンセントが備わっている。
レストランは手前がテーブル席で奥が畳敷き。窓が広くて海の見晴らしもよい。
レストランの照明はトカラの名物がモチーフ。ハイビスカスやボゼもあった。
自販機は数台あり、品揃えが充実している。ビールはアサヒスーパードライ。
トカラ列島の情報入手先
十島村役場公式サイト
地図、みどころ、宿泊施設、釣りポイント、お祭りなど、有人各島の基本的な観光情報がまとめられている。十島村の気象情報も便利。トカラ列島には飲食店がなく、売店があるのは一部の島のみ。民宿は1泊3食付きで各島に数軒ある。島内にレンタカー、レンタバイク、レンタサイクルは原則的にない(と考えたほうがよい)。ただし、フェリーとしま2を運航する中川運輸にレンタサイクルが2台あり、前日までに予約すれば鹿児島港で借りることができる(2018年5月14日現在)。
十島村役場公式サイト>フェリー情報
フェリーとしま2の運航スケジュール、料金、運航状況はここでチェックしよう。鹿児島港にはフェリー乗り場が複数あるので注意。フェリーとしま2は鹿児島本港南埠頭を出港する。また、鹿児島本港から徒歩5分ほどの場所に、十島村役場、トカラ列島の物産品が買える「トカラ結(ゆい)プラザ」がある。
かごしま遊楽館 観光案内コーナー
東京・有楽町の観光案内コーナーには、トカラ列島のパンフレットも置いてある。紙の地図がほしい場合はこちらへ。島内での交通などを尋ねると、その場で鹿児島の十島村役場に問い合わせてくれた。
トカラ列島の参考文献
『吐噶喇列島 〜絶海の島々の豊かな暮らし〜』 斎藤潤
島旅の本を何冊も出しているフリーライターの斎藤潤さんが、いちばん好きだというトカラ列島を詳しく紹介した一冊。車がなかった時代の運搬の苦労、移住してきた若い世代の奮闘、ボゼの仮面が作られる様子、近年まで行われていた風葬の習俗など、同じ日本とは思えないエピソードの数々が綴られている。口之島の野生牛を地元で「ところうし」と呼ぶくだりには、じんわりとあたたかい気持ちになった。(光文社新書、2008年8月15日発行)
『吐噶喇 〜トカラの遠い空から』 瀬尾央(ひろし)
著者は自ら操縦桿を握る航空撮影のプロフェッショナルで、航空に関わる社会教育や調査研究も手がけている。十島村の上空写真を撮影したことがきっかけでトカラと縁ができ、トカラを広く知ってもらいたいと本書を著した。1992年に発行された本だが、空撮写真が満載で眺めて楽しく、島の祭事や人々の暮らしぶりがリアルに伝わってくる。空撮だけでは飽き足らず、著者はトカラの美しい海を撮るためにダイビングにも挑戦。空から海からトカラ列島を俯瞰で眺めるスケールの大きさは飛行機乗りだからか。絶版になっているので中古品または図書館でぜひ(世田谷区立図書館にはありました)。(山と渓谷社、1992年6月1日発行)
『トカラ列島 秘境さんぽ』 松島むう
島旅が好きなイラストエッセイストによるトカラ紀行で、トカラ列島から帰ってきてから読んだ。レントゲン便の旅では島のおいしいものを一度も口にできず、乾きものや缶詰やインスタント食品ばかり食べていたので、島の魚や料理のイラストに見入ってしまった。巻末に旅の便利帳が付いていて、ガイドブックとしても役立つ。(西日本出版社、2018年7月26日発行)
『生きていく民俗 〜生業の推移〜』 宮本常一
第1章「くらしのたて方」に宝島の自給社会が書かれている。民俗学者である著者が宝島へ渡ったのは1941(昭和16)年。かつては年に一度の年貢船を出す以外に島外との交通はなく、貨幣が流通することはほとんどなく、職業の貴賤や階級の上下もなかった(でも琉球から来た人への差別はあった)などの記述がある。本書ではほんの5〜6ページしか割かれていないが、強烈な印象に残り、トカラ列島に興味を持つきっかけになった。(河出文庫、2012年7月20日発行)
(おわります)
文・船内写真:根本聡子
旅行した日:2018年5月14日〜17日