鹿児島県十島村、トカラ列島
Tokara Islands, Toshima Village, Kagoshima, Japan
「フェリーとしま2」は口之島と中之島を巡った後、さらに南下して諏訪之瀬島、平島、悪石島に寄港しました。鹿児島に近い口之島と中之島に比べ、諏訪之瀬島より南西の島は港も小さく、次第に離島感が増していきます。2日目の夜は悪石島のやすら浜港に停泊。島の民宿は部屋数が限られているため、乗客の多くは船中泊となります。
(写真:武藤奈緒美、文:根本聡子)
After Kuchinoshima and Nakanoshima, “Ferry Toshima 2” arrived at Suwanosejima, Tairajima and Akusekijima. The ports of the islands in the southeast of Suwanosejima are much smaller than those of two islands close to Kagoshima, and I felt an isolated atmosphere about the farther islands. On the second day we stayed overnight on the ship at the port of Akusekijima.
<photographs by Naomi Muto, text by Satoko Nemoto>
諏訪之瀬島
中之島を出港した「フェリーとしま2」が次に向かったのは、30km先にある諏訪之瀬島。トカラ列島では中之島に次いで大きな島だが、地図を眺めると道路が通っているのは島の南部だけ、しかもごく狭い範囲で、島の中央は「御岳(おたけ)火口付近は火山活動のため立入禁止」となっている。
標高799mの御岳は過去に大噴火を繰り返してきた活火山で、いまも噴煙を上げ続けている。1813(文政10)年の爆発的な噴火ではほとんどの人家が消滅し、全島避難によって諏訪之瀬島は無人島になった。およそ70年後の明治初期に来島した奄美大島出身の藤井富伝らが、困難と苦労を重ねながら再び入植した歴史がある。現在もなお赤黒い溶岩流や火山堆積物が噴火当時の姿を残していて、島全体が緑に覆われたこれまでの島々とは違う様相を呈している。
諏訪之瀬島の入港は11:05。雲ひとつない青空の下、強い日差しが降り注いでいた。諏訪之瀬島には東岸と西岸に2つの港があり、天候によって使い分けている。この日は東岸の切石港に入港した。これまでの2島に比べて、諏訪之瀬島の港はとても小さい。桟橋が狭くて居場所がないので、下船するとすぐに港を離れた。
切石港から北へ、防波堤の上を歩いて、船から見えた乙姫の洞窟へ行ってみた。竜宮城の乙姫が海から上がって物思いにふけった洞窟といわれている。洞窟の中はひんやりして、暑さをしのぐのにちょうどいい。天井からぽたりぽたりと水滴が垂れてくる。上を向いて口で受け止めようとするが、なかなかうまく落ちてくれない。洞窟の中からは切石港と海が望め、明暗のコントラストが美しかった。
諏訪之瀬島の停泊時間は1時間40分と短いため、あまり遠くへは行けない。乙姫の洞窟からいったん切石港へ戻り、その先のナハ浜を目指すことにした。上り坂の舗装道路をしばらく行くと、ナハ浜へ分岐する道標が立っている。リュウキュウチクがアーチを作る未舗装の道を進み、正面に海が開けたところで時間切れ。もと来た道を港へ引き返した。
ナハ浜から東のほうへ行くと、諏訪之瀬島のみどころになっている空港跡地(諏訪之瀬島空港)がある。1970年代の後半、ヤマハのリゾート開発によって造られた空港で、1980年代にリゾート計画が頓挫して放置された。現在は緊急用のヘリポートとして利用されている。日本最後の秘境ともいわれているトカラ列島で、そんな空港跡地が観光スポットになっているのが面白い。切石港から往復4.5kmと聞き、空港跡地へ行くのはやめて海を眺めるほうを選んだ。
諏訪之瀬島メモ
面積:27.61 km2 周囲:27.15 km 最高点:799m 人口79人
みどころ:乙姫の洞窟、藤井富伝翁の墓、作地温泉、ナハ浜(塩見崎)、空港跡地、マルバサツキ